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少し早い雪がちらつき、森はうっすらと雪化粧していたが─ 室内はまだ、ほんのり暖かい空気を抱え込んでいる。 男は木製の椅子に腰掛け、 手にした封筒の封を、彫金で飾られたペーパーナイフで開いていく。
便箋には、少し角ばった、しかし丁寧な文字が綴られていた。
To Marmelo
クインスです。 大分日が経ってしまったので、一応連絡しておきます。 あなたが探しているような装飾品は、今のところ見つかっていません。 が、不思議な石なら一つ手に入れましたよ。 水の香りがする、とても美しい宝石。 似たような物も何種類か見つかっているようなので、 集めて持って帰るつもりではいます。興味あるでしょう? まったく…少しくらいは感謝しながら待っていて下さいよ?
そうそう。島で出会ったルビーという女性が、あなたによろしくと。 青い髪をした、とても…そう。暖かな方です。 それで、えぇと。彼女とその子供さんに、何か作ってあげると約束したんですけれど。 手元にある素材は、大分限られてしまって。 そんなわけですから何か見繕って、こちらへ送ってきてはくれませんか? よろしく頼みます。
それから、出来れば暖かそうな衣服も送って頂けるとありがたいのですが。 どうせあなたは、家でぬくぬくと過ごしてるのでしょう? ああ、まったく……。 とにかく!お願いしますよ。 届け先は──
手紙は、遺跡外にある宿の住所を記して締められていた。
微かに笑みを浮かべた男は手紙を机の上に放ると、 「やれやれ」という小さな呟きと、深いため息を漏らした。