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仔淡殿から桜茶が届いた。 ふんわりと甘くて良い香り。 ありがとう!
手紙は明日纏めて出そうと、せっせと書き溜めている。 そんなわけで今日も投函は無しだ。 待たせている者にはすまないのぅ。
========== 画板でこしらえた机の上に、 書きかけの手紙と、封をされた手紙がいくつか、そして湯飲みが一つ。 ペンを走らせていた手を止め、私は湯飲みに目をやった。 茶の中で桃色の花が揺らめいている。 「サクラ」の花だという。
実は私は、桜という木を直に見たことが一度も無い。 ブナとカエデの森で育ち、外に出たことが殆どないためだ。 春が近づき皆が桜話に花を咲かせても、 そこまでの感慨もなく、聞き流す一方だった。
だがしかし、この花は何と美しい色をしているのだろう。 森にはなかった淡い桃、柔らかな白。 ああ、もしこの花が一面に咲き乱れていたら…どんなに美しいことか。 想像した風景に、ほうっとため息がもれる。
一口、茶をすすった。 優しく甘い香り。思わず顔がほころぶ。 「ありがとう」 この茶を贈ってくれた少女を思い浮かべ、小さく呟く。
夜気にも春が混ざり、緩やかな風が髪を揺らしていた。