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…… (尻尾をゆらゆら揺らしながら、何か落描きしているようだ。 時々顎の下に手をやって考え込んだり、触角がピンと伸びては緩みを繰り返している) (クラリスさん、ソウさん、薫子さん クリックすると原寸) --------(30日追記)--------- 「……」 「?ロジュ、どうかしましたか」 左方をじっと見つめる仲間に、クインスは歩み寄って声をかける。 大きな瞳が向けられた先を辿れば、豊かな流れをたたえる川。 「視線を…感じた気がして」 戸惑うように答えた少女は、こちらを見上げると大きくかぶりを振った。 「いや、気のせいだろう。気にするな」 「気のせい…ですか」 少女が去った後も、クインスはじっと川の際、そして向こう岸に視線を延ばしていたが… そもそも視力の弱い眼に映るものは少なく、 諦めるように踵を返した。 戦闘を終えた後、ささやかな休息時間の、ささやかな出来事。 ジェイク・バーティリーの日記
まだ夜も明けきらないうちに、クインスは簡素な寝床を滑り出た。 白々とした陽が眼に届く前に、さっさと顔を洗ってしまいたかったのだ。 他の3人の眠りを妨げないよう、息を潜めるようにそっと足を踏み出し… そしてふと、昨夜の出来事を思い返す。 振り返り、野営地にくすぶる火の横へ視線をやると、静かな瞳で見返すジャファルの姿があった。 軽く会釈すると、僅かな微笑と会釈が戻ってくる。 『やはり彼は、眠らずに…』 ぼんやりと考える。 昨夜少しだけ交わした会話、その中で一瞬だけ見せた瞳─遠くを見つめるような表情が、 なぜだかクインスの脳裏に焼きついていた。 幾度となくめぐり来る静かな夜、彼は何を思って過ごしているのだろう。 『一体過去に何が……などといった詮索は、下世話でしょうね』 頭をもたげようとしていた好奇心を追い払い、そのまま静かに野営地を離れる。 ------ クインスはジャファルのことを殆ど知らない。 いや、ロジュのことも、クニーのことも。 人波の中、ぼんやりと休憩していたクインスに声をかけてくれたのが、エルフのクニーだった。 「一緒に行かないか」 シャープな体躯、飄々とした雰囲気、そして少しそっけなくも思える言葉。 それは話に聞いたエルフそのもので、クインスはひっそりと感動したものだ。 だが突然のことに、なかなか返事は喉から上がってこなかった。 そんな戸惑っていた心を、一度に解きほぐしてくれたのがロジュだった。 「ロジュだ、よろしくな!」 笑ってこちらにやってきた少女は、あちこち包帯に巻かれた痛々しい姿ながら、しかしとても眩しく… まともに見たことのない太陽を直視した気持ちになり、髪に隠された目を、つい細めてしまった。 夜の生き物が光に向かい、火にとびこむように。 出来ることなら共に歩いてみたい、この瞬間そう思ったのだ。 ジャファルは…… 「ジャファル。彼は…夜。」 水音を探り歩きながら、ふいにクインスは呟いた。 全身に施されたボディペイント、常に共にある2人、 外見の差異から兄妹や親子には見えないが、彼はきっとロジュと同胞なのだろう。 だが2人の持つ空気はまるで正反対だった。 彼は、静かな夜。 夜の奥に何が潜むものか─ 思考はそこで止まる。 クインスは、穏やかなせせらぎを奏でる川辺へたどり着いていた。 無言のまま腰のポーチから紐を取り出すと、量の多い髪を1つに纏める。 さらされた瞳に、顔をもたげてきた朝の光が突き刺さるようだ。 眉をひそめながらそっと水をすくい、顔を洗い流していく。 体温の低い指先には温く感じた水だったが… 「ああ。顔に触れると、流石に冷やりとしますね」 だが、まとわりつくような朝の空気、そして余計な考えを払うには丁度良い冷たさだった。 触角まで水で洗い終えると、クインスはやっと髪を下ろし、”ほう”と一つ息をつく。 「さあ、そろそろ皆も起きるころでしょうか」 ブリキの缶に水を汲みいれ、元の野営地へと引き返す。 その足取りは、いつもと変わらず静かで、そして緩やかだった。